携帯会社に用があって電話したのですが、音声ガイダンスの後に、機械音のアナウンスで「Webでも契約内容の確認が出来ますので、ぜひご利用ください」という内容の音声が流れたのにびっくりしました。どこのコールセンターも、いかにWebサイトで自己解決してもらうかを考えているのですな、と思ったのです。
携帯電話系のコールセンターは、さまざまなタイプのお客様と対応しました。今思い返してみると、一番大変でしたが、一番勉強になったなと感じたコールセンターでした。と良い思い出を書いてみましたが、当時は正直、きつかった思い出しかありません。1日に1回はクレーム対応が当たり前のような時代でした。問い合わせといえば電話で、ホームページで情報を探すという文化はほとんどありませんでしたし、ホームページはパソコンで見るのが当たり前で、携帯電話はせいぜい携帯用の簡易サイトを見る、程度だった気がしますので、何かわからないことがあれば、携帯ショップに行くか、電話して聞くのが当たり前だった時代と思います。ですから、回線は常にパンパンで、30分待ちや1時間待ちは当たり前の時代でしたね。
私が働いた携帯電話系のコールセンターは、なかなかの体育会系でして、ノリの良さや勢いを大切にしていました。そして、今よりもバブリーな時代でしたから、インセンティブなどもありました。私が当時、最高にもらったインセンティブは15万円でした。今振り返ってみれば、営業でもないのにもらいすぎですよね。その位過酷だったんだろうなとは思います。私自身、勢いで仕事しなければ、おそらく倒れていたと思います。当時一緒に働いた人とは、今でもたまに連絡を取り合う人もいますので、そういう意味では貴重な時間を過ごしせたな、と思いますね。
そのお客様と対応した時の第一声は「携帯電話の調子が悪いんだよ」だった気がします。その後すぐに受付を行い、何が起こったのでしょうか、と確認したら、そこから10分間は、お客様 on Stageでした。
「調子が悪いんだよ」の場合、何パターンかありますが、この方の場合、結論から言うと、スピーカー部分の故障の可能性が高く、修理したいならショップに持っていってください、という案内をしたのですが、そこにいきつくには非常に大変な道のりでした。
どうしましたか？と確認したところ「ぼくは◯◯大学生なんです。半年前に携帯を買ったんですけど、たまに声が聞こえなくなる事があるのです」と、この時は普通の問い合わせでした。声が聞こえない原因はいくつかあって、スピーカー部分が故障している事、電波の入りが悪くて声が聞こえなくなる事などが主な原因です。本来はこの辺りからオペレーターが質問をして、問題の切り分けをするのですが、お客様が勝手に話してくれました。なんといってもお客様 on Stage ですから、どうでも良いことをたくさん話してくれました。
箇条書きでまとめます。
– ぼくがこの携帯を好きな理由
– この携帯のここがイマイチ
– この携帯は彼女と同じ携帯で、色違い
– 彼女にこの携帯を勧めた事
– 彼女との出会い
– サークル活動
– 将来の夢
私も若かったのでしょうし、LDから言われていた事、お客様の話しは途中で割り込んではいけません、と言われ、それを忠実に守った結果、どんどん話しが脱線していってしまい、収集がつかなくなってしまいました。
たしか、将来の夢は、芸能活動をしたい、ダンサーになりたいんだ、と言われ、相槌をうちながら心の中では「そろそろ切り分けしないとLDに怒られるかも」なんて思いつつ話を聞いていたと思います。夢を語り、ダンサーになるために、サークルで毎日練習していること、携帯を落とした事があるので、もしかしたらそこで壊れてたのかもしれないけど、携帯が割れてないから多分それが原因じゃないと思う、という話しで、私としては「それが原因で壊れたんだろうな〜」と思ったので、ついうっかり口を滑らせてしまったのでしょう、「落としたら外は壊れていなくても内部が壊れる事ありますよ」と言ってしまったのでした。そしてその一言で、お客様 on Stageは終了しました。お客様の声のトーンが明らかに低くなり、そこから先は、「そうですね」「はい」「分かりました」のみです。会話が盛り上がる訳もなく、もちろんアンコールはありませんでした。
私は思いました。こんな落差がある人に、芸能人を渡り歩くのは無理だ、と。こんなメンタルで務まるはずがない、と。ちなみに受付時は本名を伺うルールでしたので、本名は分かるのですが、少なくともこの人の「本名」では、TVなどで名前を聞いた事はありませんので、私の予想は外れていなかったのだろうと思います。
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